しかし、毎月とても労力がかかる割には、関与先にはあまり認知されていないように思い、もう送るのを止めようか、でも今まで送り続けてきたものを急に止めるのもどうか、などと思案していました。ちょうどそのころ、普段連携している弁護士先生からこの「士業向けニュースレター制作サービス」を紹介されました。

私が送り続けていたDMは、税法改正や税務に関する比較的詳細なトピックスが中心でした。専門職だから普段の情報発信も当然専門分野の情報を発信すべき、ということをこれまで疑うことはありませんでした。もちろん、それは決して間違いではないとは思いますが、関与先への発信として必ずしもこちらが期待する効果が得られるものではないことに気づき、まさに目から鱗が落ちる思いでした。これまでずいぶん勿体無いことをしていたな、と思います。

このサービスのニュースレターで取り扱われるテーマは、世の中の動向、経済、金融や社会保障制度を中心とした幅広いもので、私自身も毎回とても興味深く学ばせていただいています。経営者の方も、従業員の方も、家に帰ればそれぞれのご家族や人生があります。それぞれのライフプランを考えるうえで役立つ情報は、きっと誰にでも喜ばれる情報だと思います。発送の頻度は、毎月から年4回と従来と比べて減りましたが、関与先の反応は上々です。あと、便利な「発送代行サービス」を利用できるので、関与先グリップのためにかかる事務負担が大幅に削減できたことも大きなメリットです。

当方の関与先は主に中小法人や個人事業主の方が中心で、日ごろから気軽に経営や財務などについても相談してもらえるような事務所を目指しています。しかし、比較的頻度高くコミュニケーションが取れていることでタイムリーに経営状況を把握できる関与先と、一方で年に1度、税務申告の前後にしか実質的なやり取りが出来ていない関与先が存在していました。そして、そこへコロナ禍が始まりました。経営に大きな影響を受けた関与先の中には、当方がもっと早く状況を把握できていれば、よりよい提案や対応が可能だったのでは？と思われる会社もあり、関与先とのリレーションをもっと真剣に考えなければと思うようになりました。これが導入に至ったきっかけです。

ニュースレターの紙面がライフプランニングに関するテーマが中心、というところがとてもユニークだと思います。相手がどなたであれ喜んでいただける情報と思いますし、それが税理士から届くというところに意外性がある。これまで税理士のニュースレターといえば、税務の話題ばかりを書いて送るというイメージがありました。しかし、よくよく考えてみると社長は税務の情報を四六時中必要と感じているわけではありません。社長それぞれ必要と感じるタイミングはバラバラです。むしろ、「税務知識とか言われても、複雑で面倒な事だから顧問料を払って雇っているのに…！」とお感じになるとしたら、それは逆効果かもしれません。

関与先とのリレーションについては、経営上何か少しでも心当たりや困りごとが生じた際にすぐ、「これも先生に聞いてみよう」となる関係性といいますか、連絡してもらいやすい環境を整備することが重要だと思います。幸い、ニュースレターをお送りした関与先からは、「勉強になりました」、「すごいですね」、「いつもありがとうございます」、という声が寄せられています。信頼関係をベースに繋がりを強化することは、関与先全体のご安心にも繋がるのではないかと思います。そして、その結果として顧問契約の継続性向上や、新しい関与先のご紹介などにも結びついていけばとても嬉しいですね。

特に、いつ発生するか予見しにくい案件は、それが発生した時に、まず初めに自分が相談相手として選ばれるかどうかが重要です。ニュースレターは私の存在を身近に感じていただくのに最適なツールだと思います。相手にとって魅力的なニュースレターは、やはり心に残ります。私は3年くらい活用していますが、最近はニュースレターをお送りしている方から、別の方の相談案件の紹介を頂くことが増えています。「知り合いが○○社を経営しているのですが、何か困りごとがあるみたいなので紹介してもよろしいでしょうか？」というような話が増えています。

紙面の私の個人欄は、敢えて業務の事は書かず、私の普段の出来事や感じたことをテーマにして書くようにしています。また、毎回書評を連載しています。それは、私の素顔やものの考え方が伝わることで、より興味と関心を持っていただけるのかと。弁護士である以前に、ひとりの人間として親しみを持っていただければ、例え会わない間にも信頼の感情は積み重なります。きっと私を必要とされる方がおられたときにはご紹介もしやすくなるのではないかと思います。

ニュースレターの他にはメルマガを配信しています。法務に関することや、重要な判例などの情報は、こちらに掲載するようにしています。実は、ニュースレターをお送りしてからメルマガの購読率・開封率も向上しました。ニュースレターは信頼や期待を育むだけではなく、ファンベース創造の可能性を秘めていると思います。価値観の合う依頼者や顧問先をより大切にしたいと考える方にはお勧めできる取り組みだと思います。

セミナーを受けていただいた後にすぐに個別相談とはならずに、一旦持ち帰って考えたい方もいらっしゃるので、その後の繋がりを維持するためのフォローツールとして活用しています。セミナーにご参加される方は年齢を重ねた方が中心となるので、メールマガジンやWEB媒体よりもやはり郵送できる紙媒体のほうが認知度の向上には役立ちます。

民事信託は、その多くがセンシティブな相談内容を含むため、むやみにDMなどで解決策を売ろうとすると逆に信頼を失います。その点、このニュースレターはエビデンスの確かな金融経済の話題が中心なので、読み手にあざとさを感じさせることはありません。私の個人欄は、プライベートな話題を中心に、家族の写真を掲載したりしています。そうすると一人の人として信頼してもらえます。中には、子どもの写真を見た方から「私たちの孫と同じくらいの歳だね」とお声がけいただいたりします。こうして一気に心の距離感が縮まって、家族関係とか、ご子息世帯への想いや心配事など、大切なことをお聞かせいただけるようになることも度々あります。

また、このニュースレターの取り組みが、もともと非常に厳しいコンプライアンスが求められる金融業界で、長きに亘って実際に成果を積み重ねてきた実績があるということも安心できるポイントです。顧客とのリレーションは長く続けていける仕組みがとても重要だと思います。年4回の発行回数も、必要にして十分だと思います。